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© 金沢大学 子どものこころの発達研究センター

発達障がい市民広場

第52号

最新医学論文52

オキシトシンを小腸で吸収する仕組みを発見!

小腸絨毛の上皮細胞(青色部分)の周りに存在するRAGE
(緑色部分)

子どものこころの発達研究センターの東田陽博特任教授,医薬保健研究域医学系血管分子生物学の原島愛助教,棟居聖一助教,山本靖彦教授らの研究グループが,オキシトシンを小腸で吸収する仕組みを解明するとともに,その補給が,未熟児の社会性(社会脳)の発達に役立つ可能性があることを見いだしました。

オキシトシンは,人が他人のこころを推し量り,交流していく際に必要なペプチドホルモンとされ,それを司る社会脳の発達に欠かせないものと考えられています。母乳中には,多くの栄養素とともに血液から濃縮されたオキシトシンが含まれており,母乳を飲むことで乳児にオキシトシンが伝わることが知られていました。しかし,腸管では,体にとって良くないものを取り込まない機構(腸管障壁)が生後間もなく形成されるため,オキシトシンは腸管から自由に移行しないと考えられており,腸管障壁の存在下で,オキシトシンがどのように腸管から体液に取り込まれるかは,これまで全く知られていませんでした。

本研究グループは,Receptor for Advanced Glycation Products (RAGE)という分子が小腸の絨毛上皮細胞にあり,それがオキシトシンを腸管側から体内側へ輸送し,オキシトシンを吸収することを明らかにしました。今回の研究結果は,RAGEがオキシトシンを輸送することから,オキシトシンを薬や栄養物として口腔投与(飲み薬)できることを示しています。また,粉ミルクにオキシトシンを添加し摂取することでも,未熟児の発育の社会性低下および自閉スペクトラム症発症を低減できる可能性も示唆しています。

本研究成果は,総合科学誌「Scientific Reports」に掲載されました(オンライン版公開日:日本時間平成29年8月11日)。

生後直後(腸管障壁形成前)において,オキシトシンは腸管上皮細胞を比較的自由に透過するが,腸管障壁形成後には,RAGEが小腸内のオキシトシンを輸送する役目を担う。