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発達障がい市民広場

第44号

最新医学論文44

知的障害を伴う男性の自閉症者を対象とするオキシトシン:盲検下探索的臨床試験

Toshio Munesue et al.
Oxytocin for Male Subjects with Autism Spectrum Disorder and Comorbid Intellectual Disabilities: A Randomized Pilot Study

Front. Psychiatry, 21 January 2016

概要

自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder)は、100人に1人の有病率で、国内に100万人以上の障害者がいると見積もられていますが、現在、有効な治療薬はありません。本障がいは、社会性障害(コミュニケーション障害)と反復的活動を主症状とします。社会性障害が中核症状です。ところで、下垂体後葉ホルモンであるオキシトシン(OXT)は、他者への愛情や親近感をもたせる中枢作用があると言われています。そこで15歳以上の30名の男性の知的障害を伴うASD者に対するOXTによる症状改善を目指した長期投与の臨床試験を行いました。何故このサブクラスの人を対象にしたかというと、ASDの56%は知的障害を持ち、その46%はてんかんを伴っているからです。このような方々は、今まで行われたオキシトシンの治療効果の研究で、研究が遂行できるか分からない点と客観的指標で評価することが難しい点から対象とされませんでしたが、このような人達にこそ新しい治療法が必要と思い行いました。

両方の鼻に1回ずつ朝夕噴霧する(16国際単位)という方法で、治療を受ける本人、家族、治療者もオキシトシンを使っているか、偽薬使用中か分からない(Randerized Control Test)状態で8週間投与後直ぐに薬をスイッチし、更に8週間投与しました。従来から知られていた5つのASD評価法の結果では、オキシトシンと偽薬投与中に差を見出せませんでした。しかし、家族や医師の観察記録の中から、患者の家庭内での対人交流の頻度は、オキシトシン投与中に多いという結果を得られました。今後は、対人交流をより良く評価する方法でオキシトシンの効果を判定する必要が出てきました。