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第11号
最新医学論文11
自閉症スペクトラムと健常の人におけるCD38の2つの遺伝子変異
Two genetic variants of CD38 in subjects with autism spectrum disorder and controls
Neuroscience Research May 2010 in press
日本人自閉症330名、韓国人16名、アメリカ自閉症遺伝子銀行(Autism Gene Resource Exchange)を含む白人263名、健常日本人732名, 韓国人150 名のCD38遺伝子上の15カ所の一塩基多型(SNP)を検査した。その結果、SNP06(rs3796863)C/AのA型を持つアメリカ人(28%ほどにみられる)が高機能自閉症と相関がある。SNP13(rs1800561)C/TのT型を持つ日本人(1-5%に見られる)で自閉症に弱い相関を見出した。T型を持つヒトはCD38の140番目のアルギニンがトリプトファンに変異し、CD38の機能低下を起こし,オキシトシンの遊離低下をひきおこし、それが血中濃度の低下と引き起こすと考えられた。
16年間診察を続けてきた自閉症者(T型を持ち血中のオキシトシン濃度が低かった男子・21歳)が2008年6月の診察で、
- (今まで目を会わさなかった)患者が医師の目を見、時に笑顔を浮かべる。
- (会話が成り立たなかった)患者さんに簡単な質問、たとえば、「今日は良い天気だね」に「はい、いいえ」で答えられる、など、社会性行動に著しい改善がみられる事を診察室で観察した。家族の話では、3日前から個人輸入したオキシトシンを朝夕2回両鼻に点薬(一日の噴霧量16国際単位)し個人服用した。
その後、約数カ月に渡り、点鼻を続けており、診察では、改善が持続していると断定できた。今まで測定不能であった種々のテストが可能になった(例えば,IQ 検査)。
解説
自閉症にオキシトシン点鼻服用に効果のあることが、金沢大学子どものこころの発達研究センター、子どものこころの診療科で10カ月という長期投与の1例で世界で初めて確認しました。しかも、知能の高い自閉症であるアスペルガーなどでは、オキシトシンの効果が報告されていましたが,知能が低い(典型的な)自閉症例での確認はめずらしい。金沢・浜松医科・大阪の3大学連携の「子どものこころの発達研究センター」や3大学の連合大学院小児発達学研究科初の共同研究の成果。さらにそれらを中心に理研等全国25海外7施設との共同研究による自閉症(原因)危険遺伝子の発見にうらうちされた臨床例です。そして、これは、CD38のマウス研究(東田陽博ら、Nature誌に2007年に発表)を自閉症の臨床研究治療へ応用した成果です。治療を待ちわびている発達障害者や家族の方々に広くこのことを知ってもらいたい。