金沢大学

相互認識機能研究臨床部門

本部門は附属病院子どものこころの診療科と密接な関係にある。この診療科は、自閉スペクトラム症(自閉症と同じ意味)を主な対象疾患として、幼児から成人までの広い年齢層の患者さんの診断を行い、必要な治療を施し、社会の中で自立した生活を営むことができるように援助を行う。

ところで援助は大きく「診断」と「治療」の2つに分かれる。

「診断」は、病気であるのか、病気とは言えないのかの区別をまず行い、次に病気ならばどのような病気なのかを決めることである(病気とは言えない場合、そこで評価は終了する)。自閉スペクトラム症の診断は容易ではない。症状の典型的な患者さんの場合でも、1,2回の診察で診断を下すことは困難である。少なくとも次の3つの側面からの評価が必要である。第一、出生時からの発達の過程の詳細な聴取を養育者から行い、特徴的な症状が認められるかどうか探っていく。第二、患者さん本人と直接に関わって、現時点で特徴的な言動があるかどうかを探していく。第三、どの程度の発達水準、知的水準、そして社会適応水準に あるかをとらえる。この3点はもちろん世界に通用する評価法により定められる必要があるが、評価法の資格を取得することが要請される場合もあり、簡単には達成できない課題である。平成27年度に入った時点での、本診療科における水準は、第一の側面はある程度達成されており、第二はほぼ達成されており、第三の側面の達成度は道半ばである。ただそれでもほぼ正確な診断が行われていると考える。

「治療」は患者さんに応じて広い観点から検討される必要があるが、ここでは薬物療法と療育の2つを取り上げる。自閉症の患者さんは青年期以降にイライラや不眠などの副次的な症状について薬による治療の必要な場合がある。これは本診療科にて行うことができる。大きな課題は療育である。人的および設備的な制限のために、現在、療育を行うことができない。今後の課題となるが、大学病院であるので、地域の施設にて行われている療育と同じ療育では意義がないであろう。すると、どのような療育が有効なのか、療育は自閉症の脳機能を変化させるのかどうか、という研究的な療育を行うことであろう。

本部門は、自閉症を対象とすることにほぼ特化した子どものこころの診療科と表裏一体の関係にあり、その一例は、現在、進行中のオキシトシンを用いた多施設共同臨床試験にある。今後も研究を重視した臨床活動を行っていくことになるであろう。

センターオブイノベーションプログラム 連合大学院 子どもみんなプロジェクト 国立成育医療研究センター子どもの心の診療ネットワーク事業 東田陽博研究室

ENGLISH