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発達障がい市民広場

第53号

最新医学論文53

オキシトシンに関しての総説

Excitation/inhibition imbalance and impaired neurogenesis in neurodevelopmental and neurodegenerative disorders.

Lopatina OL, Malinovskaya NA, Komleva YK, Gorina YV, Shuvaev AN, Olovyannikova RY, Belozor OS, Belova OA, Higashida H, Salmina AB.

Rev Neurosci. 2019 Jun 1. pii: /j/revneuro.ahead-of-print/revneuro-2019-0014/revneuro-2019-0014.xml. doi: 10.1515/revneuro-2019-0014.  [Epub ahead of print]

概要

脳の興奮/抑制(E/I)バランスは、シナプス入力のコントロールを介して神経ネットワーク活動を最適化するための大切な役割を果たしています。さまざまな神経伝達物質がE/Iバランスの変調を介してシナプスの可塑性に影響を与え、脳の発達過程で神経細胞(ニューロン)とグリア細胞の発生・分化にも関与しています。そこでは抑制性神経伝達物質のガンマアミノ酪酸(GABA)やオキシトシンに代表される神経ペプチドが働いており、E/Iバランスが正常脳の社会性行動と関連する神経可塑性の調節だけでなく、神経発達障害や神経変性疾患の発症にも重要な意味をもっていることが推測されます。


Oxytocin and excitation/inhibition balance in social recognition.

Lopatina OL, Komleva YK, Gorina YV, Olovyannikova RY, Trufanova LV, Hashimoto T, Takahashi T, Kikuchi M, Minabe Y, Higashida H, Salmina AB.

Neuropeptides. 2018 Dec;72:1-11. doi: 10.1016/j.npep.2018.09.003. Epub 2018 Sep 21. Review.

概要

社会性認知は、社会的に意味がある情報を識別、解釈、記憶する重要な脳活動です。社会性認知は、幼児期から成長とともに発達しますが、精神疾患で障害されることがあります。近年、社会性認知に興奮/抑制バランス機構が関与していることが分かってきました。当初、興奮/抑制バランスの崩れは統合失調症の発症メカニズムを説明するために提案され概念ですが、自閉症スペクトラム症(ASD)の発症メカニズムにもあてはまる可能性があります。本総説は、GABAとオキシトシンが興奮/抑制バランス機構に関与していることを説明しています。


Neurobiological Aspects of Face Recognition: The Role of Oxytocin.

Lopatina OL, Komleva YK, Gorina YV, Higashida H, Salmina AB.

Front Behav Neurosci. 2018 Aug 28;12:195. doi: 10.3389/fnbeh.2018.00195. eCollection 2018. Review.

概要

顔認証は、社会性認識の重要な指標です。顔認識と記憶の変化は自閉スペクトラム症(ASD)を含む多数の精神神経疾患の徴候となります。顔認識処理には様々な神経ペプチドが関与しており、なかでもオキシトシンは、感情認知を含む多様な社会性認識において重要な役割を演じることから、その経鼻投与が社会性認識障害の新しい治療法として有望視されています。ここでは、顔識別、社会性認識のメカニズム研究の新しい展望を紹介するとともに、オキシトシンの顔認証改善効果について考察しています。