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発達障がい市民広場

第43号

最新医学論文43

オキシトシンは、大脳皮質ニューロンへの興奮性入力と抑制性入力のバランスを調節することによって、母性行動を可能にする

Marlin, B. J. et al.
Oxytocin enables maternal behaviour by balancing cortical inhibition.

Nature 520, 499-504, 2015

Liu, L. C.
The Yin and yang of cortical oxytocin.

Nature 370, 444-445, 2015

概要

オキシトシンの重要な母性行動調節ホルモンであるが、その作用部位とメカニズムについてはほとんど分かっていなかった。今回ニューヨーク大学のMarlin博士らは、オキシトシンが大脳皮質ニューロンの応答性を調節することによって、母性行動に影響を与えることを明らかにした。同博士らは、マウスのオキシトシン受容体が右より左の聴覚皮質に多く発現していることを見出した。さらに、左聴覚皮質オキシトシン受容体が、母親マウスが仔を回収する行動を始める初期に必要であることを示した。出産経験のない雌マウスに仔マウスの鳴き声を聞かせる際に左聴覚野へのオキシトシン投与を同期させると、聴覚皮質ニューロンへの抑制性入力が弱まり、興奮性入力とのバランスが適切になり、仔マウスの鳴き声に対する聴覚皮質ニューロンの応答が強化された。