サイト名

© 金沢大学 子どものこころの発達研究センター

発達障がい市民広場

第42号

最新医学論文42

若年者の冷淡かつ非感情的な特性に関わる環境リスクとオキシトシン受容体遺伝子のメチル化修飾

Cecil, C. A. M. et al.
Environmental risk, Oxytocin Receptor Gene (OXTR) methylation and youth callous-unemotional traits: a 13-year longitudinal study.

Molecular Psychiatry 19, 1071-1077, 2014

概要

若年者にみられる冷淡で無感情な特性(callous-unemotional trait;以下、CU特性)は、共感、罪悪感の欠如が特徴である。CU特性は、社会的規範を繰り返し破る若年発症型の行為障害(conduct disorder)とも関連性があり、成人期の精神病質(psychopathy、サイコパシー)に至る危険度も高い。英国キングス・カレッジ・ロンドンのCecil 博士らは、CU特性を示す13才の若年者84名を不安・うつ状態のレベルの高低にしたがってグループ分けし、出生前後の環境因子、出生後のオキシトシン受容体遺伝子のメチル化の変化を調べた。その結果、不安・うつレベルの高いグループでは、出生前の家庭内対立、暴力といった環境因子と有意な相関が認められたが、オキシトシン受容体遺伝子のメチル化との関連性は認められなかった。対照的に、不安・うつレベルの低いグループでは、出生時のオキシトシン受容体遺伝子のメチル化レベルが高く、いじめ等の小児期の迫害は低傾向であった。これらの結果は、CU特性の形成・発達過程が単一ではないことを示唆するとともに、CU特性を予防するための早期介入の対象者、時期の適正化に役立つかも知れない。