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発達障がい市民広場

第40号

最新医学論文40

自閉症は出生前に治療できるか?

Zimmerman, A. W., and Connors, S. L.
Could autism be treated prenatally?

Science 343, 620-621, 2014

Tyzio, R. et al.
Oxytocin-mediated GABA inhibition during
delivery attenuates autism pathogenesis in rodent offspring.

Science 343, 675-679, 2014

概要

神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)は、胎児の大脳ニューロンを興奮させるが、出生後は逆に興奮を抑制する。この切り替えは、分娩時のオキシトシンへの曝露によって細胞内の塩素イオン(Cl-)濃度が低下するためと考えられている。今回、地中海神経生物学研究所(フランス)のRoman Tyzio 博士らは、自閉症モデルであるバルプロ酸ナトリウム投与ラットでは、GABAの海馬ニューロン興奮作用が出生後も持続し、抑制作用に切り替わらないことを見出した。同様な異常は、別の自閉症モデルである脆弱X症候群遺伝子FMR1欠損マウスでも観察された。また、同博士らがCl-の細胞内取り込みを担うトランスポーター分子(NKCC1)の拮抗薬ブメタニドを母体に投与したところ、自閉症モデルの仔ラット(あるいはマウス)の自閉症様行動は軽減された。また、オキシトシン受容体の選択的拮抗薬SSR126768Aを正常な母親ラット(あるいはマウス)に投与すると、仔ラット(あるいはマウス)に自閉症モデルと同様な症状が観られた。これらの結果は、オキシトシン-GABA系の異常という共通した自閉症発症の分子機序があることと、出生前治療の可能性とを示唆している。